高齢社会が叫ばれて久しい今日、人生をより豊かに過ごすことは、誰もが望んでいる共通の願いです。人生をより豊かに彩りあるものとするためにも「食事」は大変重要です。
しかしながら、要介護となって、食べる機能が衰えてしまうと「食事」は介護される側はもちろん介護する側にとっても苦痛や負担となってくることがあります。毎日欠くことのできない営みだからこそ、より良く、より楽しい時間となる工夫をしましょう。
嚥下障害のある方は、その機能レベルによって摂取できる食品、形態や量が異なるために、いずれの段階に対しても適応できるメニューが必要です。
嚥下障害のある方は、液体の摂取が困難であり、水分補給がむずかしい。また、固形物でも口腔内で溶けて液体になる食品については、十分な注意が必要です。
嚥下運動や咀嚼能力を観察し評価した後、訓練食を進めますが、段階的に嚥下困難食を進める必要があります。しかし、嚥下機能が不安定なために、栄養量の確保は難しく、経腸栄養剤や点滴との併用で進めます。
各機能レベルの食事摂取量に対して栄養量の算定が必要です。
粘性の低い食品「液体」の粘性を高め、口の中でまとまりやすくすることです。
まとまりやすくなると咽頭への流入スピードを遅くすることができます。嚥下(飲み込み)の準備が整っていない咽頭部へいきなり粘性の低い食品が流入すると誤嚥して(誤って気管に入って)しまうので、そのようなことのないようゆっくりと移動させるのです。
粘性を高めるために片栗粉、コーンスターチなどを使用する場合がありますが、市販のとろみ調整食品を用いると液体の温度に関係なくとろみ調整ができるので便利です。
摂食・嚥下障害により、生命を危険にさらす以下の3つの病気が生じますが、
食べ物を口から胃へ正しく送り込むことによりそれらを防止することができます。
人体を構成している水分は成人男子で体重の60%、高齢者では50%と言われています。
一日で汗、吸収、尿、大便などから1500ml程度の水分が失われてしまいますので、食事で摂取する水分も含めて、失われた水分の補給が必要です。
脱水になると、発熱したり、脱力感があったり、皮膚乾燥、血液濃縮が生じます。また、重度になると意識障害も生じ、生命の危険があります。
摂食・嚥下障害があると、誤嚥性肺炎の危険が高まります。
肺炎は高齢者の死因の上位にあり、その多くが誤嚥性肺炎と考えられています。誤嚥性肺炎は食べ物などが、誤って気管をとおり肺に入ることにより起こります。
通常は誤嚥すると、むせ(咳反射)が起こり、気管に入り込んだ異物を排除しようとします。高齢になるとこの反射が弱まり誤嚥の危険が高まります。
摂食・嚥下障害があると、食事が十分に摂れません。食事摂取量が減ると、栄養状態が悪くなり、低栄養の危険が生じます。
低栄養になると、免疫力の低下から褥瘡や感染症を生じてさらに低栄養となる悪循環に陥ります。
とろみ調整食品は主に液状の食品に粘性をもたせるために使われています。
介護食を食べやすい形態にする目的で食品をきざむことがありますが、これは摂食・嚥下の流れの中で咀嚼のプロセスを補助する目的で行われます。
そもそも咀嚼する目的は、唾液と混ぜ合わせ飲み込みやすい塊(食塊)にすることです。
きざむだけでなく、まとまりやすくすると、より食べやすくなります。
食事が食べやすくなれば総合的に水分量も増え、栄養補給量も増加します。
とろみ調整食品を使用すると液体を飲み込みやすくするだけでなく、食べやすい食事を提供することができます。
自宅で食事をするには、献立を考え、買い物をし、調理、配膳、後片付け、ゴミ出し、キッチンの掃除、調理器具や食器の整理など、多くの家事がともないます。
しかも、塩分やエネルギー計算など、食事へのさまざまな気遣いも必要となってきます。
そこで、食事に関する家事を軽減し、自宅でお年よりに適した食事をとれるようなさまざまな商品が出回り、サービスも提供されています。これらの利用は負担を軽くするよい方法です。精神的な健康維持の上からもお勧めできます。
市販の食品といっても多彩です。野菜の冷凍食品は、皮むきや下ゆでなどの手間が省け、少量ずつ使用することができ、買い置きもきき、さらにゴミも少なくなる、などの利点があります。
また、電子レンジや熱湯で温めるだけのレトルト食品も豊富です。ご飯、赤飯、かゆなどの米製品は、一人暮らしや夫婦二人の暮らしで重宝するでしょう。
ただし、カレーをはじめ、しゅうまい、コロッケ、肉の煮物などの、冷凍食品、レトルト食品の種類の多さには目を見張るものがありますが、これらは濃いめの味つけで、どちらかというと、若い人向けに調理されています。健康上からは、頻繁に利用するのは避けたいものです。
介護食というと、以前は嚥下障害の人を対象にした調理した素材をミキサー加工したものが中心でしたが、この数年家庭用に、かむ力、飲み込む力が弱くなったお年より向けの商品も多彩になってきました。
その一つが、魚の煮付け、野菜の炊き合わせなどの、レトルトタイプの一品料理です。メ
ーカーによって調理方法もさまざまです。かむ力、飲み込む力に応じて、同じ商品でもキザミタイプとペーストタイプをそろえたり、比較的元気な高齢者のためには、具を大きめにした商品をそろえるなど、きめ細やかな配慮もされているようです。
ただし、かんだり、飲み込んだりする力は、個人差があります。どの商品が利用者に適しているかは、表示で判断するしかありません。
各種料理のほかに、家族と同じ料理を食べやすくするためにかけるあん、野菜、果物、鶏ささみやツナなどの素材を裏ごしした食品もあります。上手に利用すれば、家庭での介護食もバラエティー豊かなものになるでしょう。
食事療法を必要とする生活習慣病が増えたことから、いわゆる宅配料理の中に健康管理食といわれるものが出てきました。
糖尿病や高血圧、肥満などを対象にした食事を宅配してくれるサービスです。
この健康管理食の中に高齢者向けの商品もあります。こうした商品を利用するのも一つの選択肢でしょう。
ただし、比較的元気なお年よりを対象としたもので、かむ、飲み込みが困難になったお年より向けの介護食ではありません。糖尿病などの食事療法を目的にする場合は、前もって主治医に相談してみましょう。
当サイトでおすすめの介護食・そしゃく・嚥下困難対応食品をご紹介いたします。 ※必ずご購入の前に、専門家の指示を受けてください。